ヒートショックにご注意を!~浴室での事故を防ぐ効果的な対策
医療法人社団 こころとからだの元氣プラザ
呼吸器科医 伊藤 秀幸 監修
(元氣プラザだより:2024年12月号)
寒さの増してくる季節。この時期から急増するのが「ヒートショック」です。そのメカニズムを理解し、きちんと対策することで、ヒートショックによる事故を未然に防ぎましょう。

ヒートショックとは
ヒートショックとは「温度の急変で体がダメージを受けること」です。
冬場、暖かい居室から寒い脱衣所へ移動することで血管は縮まり、血圧が一気に上昇します。浴室内の寒さでさらに血圧は上昇し、次に浴槽につかると体が温まり、今度は血管が拡がり血圧が下がります。このように、温度差がある場所を行き来することで血圧に急激な変化をもたらし、それが心臓や脳に大きな負担をかけてしまうのです。
こうした急激な血圧の変化による症状は軽度であればめまいや立ち眩みで、安静にしていれば落ち着きます。しかし重度になると失神といった意識障害をきたすことがありますし、脳卒中や心筋梗塞といった疾患につながる可能性があります。浴槽内で失神してしまった場合は溺れてしまい、死亡事故につながる危険性もでてくるのです。
毎年11月から4月にかけて多くの事故が発生しています。とくに高齢者の入浴中の溺れによる死亡事故や高血圧、糖尿病、脂質異常症など持病のある方の心筋梗塞、脳卒中の発症といった危険性が指摘されています。
厚生労働省人口動態統計(令和3年)によると、65歳以上の浴槽での不慮の溺死及び溺水の死亡者数は4,750人とのデータがあり、この数は交通事故の死亡者数2,150人の2倍以上と驚きの結果が出ています。
なお、入浴中の死亡は既存の病気による病死と判断されるケースもあるため、ヒートショックによる死亡者数は人口動態調査の結果よりも多いと推測されています。
ヒートショックを起こしている人への対処法
浴槽で溺れている人をみつけた場合、可能な範囲で対応しましょう。
1. 浴槽の栓を抜き、大声で助けを呼び、人を集める
2. 入浴者を浴槽から出す(出せないときは、ふたに上半身を乗せるなどして沈むことを防ぐ)
3. 直ちに救急車を要請する
4. 浴槽から出せたら、両肩をたたき声掛けし、反応があるか確認する(反応がない場合は呼吸を確認する)
5. 呼吸がない場合には胸骨圧迫を開始し、救急車の到着まで続ける(人工呼吸ができるようであれば、胸骨圧迫30回、人工呼吸2回を繰り返す)
事故防止のための5つの対策
急激な血圧の変動を起こさないために、入浴時には次のようなポイントを意識しておきましょう。
- 入浴前に脱衣所や浴室を暖める (浴槽への給湯をシャワーで行い、お湯が沸いたらよくかき混ぜて湯気を立て蓋を外すことも有効です。)
- 熱すぎる湯温や長湯は避け、湯温は41℃以下、つかる時間は10分以内を目安に、心臓から遠い足先から肩まで徐々にかけ湯をして体を慣らしましょう。
- お湯につかったあと浴槽から急に立ち上がらない (浴槽から急に立ち上がり体への水圧がなくなると血管が一気に拡がり、脳への血液が減り意識を失うことがあります。入浴中に立ちくらみやめまいを感じたことのある方は特に注意が必要です。)
- 食事の直後、お酒を飲んだ後、薬を飲んだ後の入浴は避ける (食直後や飲酒後は血圧が下がるため、飲酒後はアルコールが抜けるまでは入浴を避けましょう。体調不良時や睡眠薬、精神安定剤服用後の入浴も同様です。)
- お風呂に入る前、同居者に声をかけておく (同居の方が入浴中の異変にすぐに対処できるようにするためです。)
また、鹿児島大学の研究グループは、「入浴時警戒情報」を県内地域向けに発信しているほか、日本気象協会では東京ガスと共同で標準的な戸建て住宅を想定した「ヒートショック予報」の情報提供を行うなど、さまざまな対策がなされています。
一方で、個々の住宅の構造や設備、個々の体調には違いがありますので、日ごろから予防意識をもって各個人が自分なりの対策を心がけることが大切です。
一日の疲れを癒す入浴タイムを快適に
暖かい居室から暖かい浴室へ―
日常的なことかもしれませんが、少しの工夫で急激な温度差による体へのダメージを防ぐことができます。就寝前の入浴は、その日の疲れを洗い流すもの。安全で快適な入浴タイムを心がけていきましょう。

関連リンク:
▶ヒートショック~最近の話題
ご精読ありがとうございました!