ヒートショック~最近の話題
医療法人社団 こころとからだの元氣プラザ
内科医 野崎 みほ
(元氣プラザだより:2024年1月号)
みなさん、大寒も過ぎた今日この頃ですが、いかがお過ごしでしょうか。大寒とはご存じの通り一年で最も寒いとされる期間で、2024年1月20日に始まり、2月3日までの15日間が大寒期です。そしてこの時期になると必ず話題となるのがヒートショックによる浴室内突然死です。日本は諸外国の中でも特に浴室内突然死の多い国であり、その理由としては我が国独自の入浴様式があげられています。そして、浴室内突然死は65歳以上の高齢者で多いことから、高齢化社会を猛進中の我が国では、今後さらに増加していくことが懸念されています。令和3年の厚生労働省人口動態統計によると、高齢者の浴槽内での不慮の溺死及び溺水の死亡者数は4,750人で交通事故の2倍でした。
実際のところ、このヒートショックによる浴室内突然死は、わかっているようでよくわからないところも多い現象でしたが、2023年2月8日鹿児島大学研究グループにより、浴室内突然死が発生しやすい環境温度が特定され、発表されました。
その内容は…
- 冬季高齢者に集中(9割が65歳以上で約半数は12~2月に発生)
- 自宅浴槽内で発生することがほとんどで、約半数は通常の入浴時間。飲酒例は稀
- 最高気温13.5度、最低気温3.0度、平均気温9.0度を下回る、一日の気温差8.8度を上回ると発生率が高い
今回の研究により、最高気温、最低気温、平均気温が低ければ低いほど、そして一日の気温差が大きければ大きいほど、入浴死の発生が多くなることが明らかとなり、この研究グループから気温によって入浴自体を控えるようにアラートを発令する全国初の試みが、2023年11月から始まりました。まだまだ寒い日々が続きます。誰にでも起こるかもしれないと意識をもって、これを機会に改めて予防策を顧みてみませんか?
【予防策】
- 入浴前に脱衣所や浴室を暖めておく
- 湯温は41度以下、お湯につかる時間は10分までを目安にする
- 浴槽から急に立ち上がらない
- 食後すぐの入浴や、飲酒後、医薬品服用後の入浴は避ける
- お風呂に入る前に、同居する家族にひと声かける
- 家族は入浴中の高齢者の動向に注意する
Development of prevention strategies against bath-related deaths based on epidemiological surveys of inquest records in Kagoshima Prefecture
(Scientific Reports 2023年2月8日)
ご精読ありがとうございました!