過敏性腸症候群 ~ いつも似たような症状で起こる下痢・便秘…それはこころとからだのSOS ~
医療法人社団 こころとからだの元氣プラザ
消化器内科医 八巻悟郎
(元氣プラザだより:2018年6月号更新)
胃腸に異常はないのに症状が慢性化するのが特徴
「毎朝のように通勤途中で下痢が起こり、電車を降りてトイレへ直行…」
「映画館など中座しにくい場所に限って、急な便意が…」
「忙しい時に限って下痢が続いたかと思うと、便秘がちに…」
そんな症状に思い当たることはありませんか。
食べ過ぎや風邪気味の時などに下痢をすることは健康な人にもあります。逆に、旅先などで便秘になった経験のある人もいるでしょう。そういった一過性の不調ではなく、下痢や便秘、またはその両方が慢性的に続く場合、過敏性腸症候群の可能性があります。
過敏性腸症候群(以下、IBS)とは、腹痛や便通異常などの消化器症状が続くものの、検査をしても異常が見当たらず症状だけが認められる病気です。腹痛・下痢・便秘が慢性的に起こるもので、下記のように三つのタイプがありますが、出勤途中や会議などある特定の状況で腹痛や下痢が起こり、排便すると症状が消えるというケースが代表的です。
その下痢はもしかしたら…過敏性腸症候群かも?!
過敏性腸症候群の症状の現れ方
過去3ヶ月間、月に3日以上にわたって腹痛や腹部不快感が繰り返し起こり、以下の項目で2つ以上当てはまる ものがある
- 排便によって症状が軽減する
- 発症時に排便頻度の変化がある
- 発症時に便の形の変化がある(いつもより柔らかい軟便・泥のような泥状便・水のような水様便・ウサギの便のような兎糞便)
過敏性腸症候群のタイプ
- 神経性下痢…下痢が起こり、便意をもよおす頻度が多い
- けいれん性便秘…便秘傾向で、ウサギの糞のようなコロコロした便を排泄
- 交替性便通異常…下痢と便秘を交互に繰り返す
ストレスの多い人やまじめな人は要注意 ?!
原因はまだわかっていませんが、30~40歳代の人、仕事や家事・育児などのストレスにさらされている人、そして男性よりも女性に多い傾向があります。性格的にはまじめな人やストレスを表に出さない人、多少痛くてもつらくてもそれがストレスによるものと気づかないで我慢してしまう人に多いようです。
そのためストレスが引き金になっていると言われています。ストレスによって脳が刺激を受けると、脳下垂体から副腎皮質分泌刺激ホルモンが分泌されます。ところが、このホルモンには腸の動きを強める作用と抑える作用、両方の働きがあるため、腸がバランスを崩してしまうのです。
症状が慢性化したり心の負担を感じたら受診を
排便に関わることは、なかなか口に出しにくいという人もいるでしょう。でも、なんらかの胃腸の不調が続いたり、そのことで心理的な負担が大きいようなら、炎症や潰瘍等がないか確かめるためにも内科か胃腸科を受診しましょう。検査の結果、潰瘍などの異常がない場合は、IBSが考えられます。
治療は、まず胃腸の症状に合わせた対症療法を行います。例えば下痢であれば整腸剤、便秘と下痢を繰り返しているようであれば腸の過剰な動きや痛みを鎮める薬などを用います。
心理的な要素がIBSの症状を長引かせていることもあります。日常生活に気を配り、対症療法を行っても症状が改善しないようなら、心療内科の受診をお勧めします。必要であれば抗うつ剤などを併用して、胃腸と心の両方をケアしていきます。
症状をやわらげる日常生活の配慮
日常生活では、腸の動きを整える配慮が必要です。まず、三食規則的に摂ること、とくに朝食は朝の排便を促すために大切です。そして間食や偏食、アルコール・カフェイン類・香辛料等の刺激物の摂り過ぎに注意を。
また、便秘症の人はコンニャクや海藻、ゴボウ等で食物繊維を多く摂るようにしましょう。IBSの便秘は腸の動きが活発になり過ぎて起こるため、冷たい水や牛乳は症状を悪化させるので注意してください。
食事の他、スポーツや趣味などを楽しんで、気分転換やリラックスすることも大切です。疲れが溜まるとストレスに弱くなるので、休養と睡眠時間を十分取りましょう。
ご精読ありがとうございました!