男性更年期障害(LOH症候群)

医療法人社団こころとからだの元氣プラザ
泌尿器科医 井手 久満
(元氣プラザだより:2017年10月号)

急激なホルモン低下が原因

男性更年期障害は日本でも十数年前から知られるようになりました。とはいえ、症状が現れているのに自覚していない男性がまだ多いようです。

男性更年期障害とは、加齢に伴う男性ホルモン(テストステロン)の低下によって引き起こされる症状のこと。医学上はLOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)と呼ばれています。

発症するのは40代後半ごろからで、患者さんが最も多いのは50~60代です(70~80代で症状を訴える方もいます)。 一般に、テストステロンの量は10代前半から急激に増え始め、20歳ごろをピークに年齢とともになだらかなカーブを描いて減少していきます。

ところが何らかの原因でテストステロンが急激に減少してしまうと、体はバランスを崩し、さまざまな不調を引き起こすのです。テストステロンを減少させる要因はいくつかあり、その代表的なものがストレスといわれています。テストステロンは大脳の視床下部からの指令によって主に精巣でつくられますが、心理的ストレスを長く受け続けて交感神経優位の状態が続くと、大脳から「テストステロンをつくるな」という指令が出されてしまうのです。

男性の50~60代に患者数が多いのは、加齢によるテストステロンの減少に加えて、職場でも家庭でもストレスの多い時期だからといえるでしょう。

「年のせい」にしてしまいがちな男性更年期障害の症状

症状は大きく身体症状と精神症状に分けられます、身体症状は、朝立ちの消失や勃起不全(ED)といった男性機能の低下がまず挙げられます。ほかにも、のばせ・多汗、全身倦怠感、筋肉や関節の痛み、筋力低下、骨密度低下、頭痛・めまい・耳嶋り、頻尿など精神症状としては、不眠、無気力、イライラ、性欲減退、集中力や記憶力の低下などとともにうつ症状が出る場合もあります。

さらに、男性更年期障害になると、メタボリックシンドローム、心筋便塞、脳梗塞やがんなどの生活習慣病のリスクが高まることもわかってきました。このことからも、テストステロンというホルモンが男性にとっていかに幅広く大きな役目を担っているかがわかります。

以上のように、症状は多岐にわたっており、人によって現れ方はさまざまです。どれをとっても男性更年期障害と知らなければ「年のせいかな?」と思い込んでしまいそうな症状なので、放置して重症化してしまうケースも珍しくありません。

もしも心当たりの症状があるようでしたら、男性更年期障害なのかどうか、白分の症状はどの程度なのかを下の表の「AMSスコア」でチェックしてみてくたさい。AMSスコアは男性更年期障害の診断に世界的に広く用いられている質問票で、17項目の質問に5段階で回答し、それぞれの点数を合計して総点数で評価します。

「AMSスコア」で男性更年期障害をチェック!

チェック項目 なし 軽い 中等度 重い 非常に
重い
1. 総合的に調子が思わしくない
1点 2点 3点 4点 5点
2. 関節や筋肉の痛み
1点 2点 3点 4点 5点
3. ひどい発汗
1点 2点 3点 4点 5点
4. 睡眠の悩み
1点 2点 3点 4点 5点
5. よく眠くなる、しばしば疲れを感じる
1点 2点 3点 4点 5点
6.  いらいらする
1点 2点 3点 4点 5点
7. 神経質になった
1点 2点 3点 4点 5点
8. 不安感
1点 2点 3点 4点 5点
9. からだの疲労や行動力の減退
1点 2点 3点 4点 5点
10. 筋力の低下
1点 2点 3点 4点 5点
11. 憂うつな気分
1点 2点 3点 4点 5点
12. 「絶頂期は過ぎた」と感じる
1点 2点 3点 4点 5点
13. 力尽きた、どん底にいると感じる
1点 2点 3点 4点 5点
14. ひげの伸びが遅くなった
1点 2点 3点 4点 5点
15. 性的能力の衰え
1点 2点 3点 4点 5点
16. 早朝勃起(朝立ち)の回数の減少
1点 2点 3点 4点 5点
17. 性欲の低下 1点 2点 3点 4点 5点
合計

結果の見方

  • 26点以下 : 正常
  • 27〜36点: 軽度
  • 37〜49点: 中等度
  • 50点以上 : 重度

※ 中等度以上の方は受診をお勧めします。  男性更年期外来のご案内

受診の際は、うつ症状とうつ病を見極めて

受診の目安として、AMSスコアの点数が参考になりますが、本人がどう感じているのかも重要です。仮に軽度という判定が出ても、本人がつらさを感じているようだったら医療機関を受診したほうがよいでしょう。

難しいのは、うつ症状とうつ病の見極めです。症状の中でもうつ症状が目立つと精神科を受診してしまう方もいます。私が診ている患者さんの中にも、最初に精神科でうつ病と診断され、抗うつ剤を処方されたという方が少なくありません。一部の抗うつ剤(ドグマチールなど)にはテストステロンを減少させてしまう薬もあり、症状の悪化につながるので注意が必要です。

覚えておいていただきたいのは、男性更年期障害によるうつ症状は、死にたくなる気持ち(希死念慮)が起きるほど重くないということです。逆に希死念慮があれば精神病の可能性が高いので精神科を受診してくたさい。

男性更年期障害の診療科は、一般的には泌尿器科になります。男性更年期障害専門外来やメンズヘルス外来などであれば、よりよいと思います。日本Men’s Health医学会のホームページ(http://mens-health.jp)には全国にあるメンズヘルス外来が掲載されていますので参考になさってください。

また、本人に自覚はなく、奥様に勧められて受診したという患者さんもいます。休日になるといつもゴルフに出かけていたのに、最近は日中家でゴロゴロしている、といったような夫の変化に奥様が先に気づいたケースです。このように身近にいる奥様にも男性更年期障害の知識があると心強いですね。

テストステロン補充療法と漢方薬でほとんどの人が改善

診察では問診票やAMSスコアなどに記入していただき、採血してテストステロン値を調べます。AMSスコアが50点以上、遊離型テストステロン値が8.5pg/ml以下であれば男性更年期障害と診断されます。

診断がついたら、漢方薬やテストステロン補充療法による治療と生活改善(後述)を並行して行っていきます。私の経験では、これらの治療で8~9割の患者さんは症状が改善します。

漢方薬でよく便われるのは、テストステロンを増やす効果がある補中益気湯(ほちゅうえっきとう)です。テストステロン補充療法については注射と塗り薬があります。しかし、男性更年期障害において、テストステロン補充療法は保険適応がありません。

なお、FDA(アメリカ食品医薬品局)は、補充療法で心疾患が増える危険性を指摘していますが、それは米国でのテストステロンの使用量が多いからです。日本で医師の指導のもとに治療を行えば危険性はありません。

男性ホルモンを維持する生活スタイルを

症状の改善と予防のために生活習慣も改善しましょう。ポテトチップスを食べながらビールを飲み、一日中横になって過ごす、そんな生活は男性更年期障害を招きます。

まず欠かせないのが適度な運動です。筋肉を使うことでテストステロンが増え、ストレス解消にもなります。おすすめは一日30分のウォーキング。だらだらと歩くのではなく、スロージョギングを加えるなどメリハリをつけましょう。また他人と競い合うスポーツも効果的です。

バランスのとれた食生活を心がけることはいうまでもありません。中でもニンニク、タマネギなどのネギ類や、ヤマイモなどのネバネバ食品は、男性ホルモンの増加に効果があるといわれています。

良質な睡眠も大切。睡眠中はリラックスして副交感神経優位となり、テストステロンが分泌されます。逆に一晩徹夜をすると2、3日はテストステロンが下がったままになります。

そして生活に張り合いが出るような趣味や生きがいを持ち、ストレスを解消しましょう。

 男性ホルモンを増やす食べ物は?

まず、体のべ一スをつくる艮質のタンパク質(肉〔牛/豚/鶏〕、魚、卵、牛乳、豆類)を欠かさずとりましょう。
さらに、男性ホルモンを増強するといわれるネギ類、ネバネバ食品、アボカドなどの食材を一緒にとると効果的。 ガ一リックステーキやニラレバ炒めはおすすめメニューです。


( イトオテルミー親友会『ザ・テルミー』(2016年10月発行)より改編 )

ご精読ありがとうございました!

 

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