再興感染症 - 古くて新しい病気:結核

医療法人社団 こころとからだの元氣プラザ
巡回健診部長(医療担当)・労働衛生コンサルタント 谷口清英
(元氣プラザだより:2016年12月号)

ビートたけしのテレビCMでも世間の耳目を集めた「結核」ですが、昭和25年(1950年)までは日本人死因の首位(厚生労働省人口動態統計)を占めていました。その後は、生活環境や治療法の進歩に伴って悪性新生物や脳血管障害にその地位を譲りましたが、まだまだ決して侮れない病気です。

平成27年結核登録者情報調査年報集計(PDF)によれば、多くの先進国では、結核罹患率は低蔓延国の水準である10未満ですが、日本はまだ14.4と4割以上高くなっています。また、都道府県別罹患率のワースト3は、大阪府、兵庫県、東京都で、この年の新登録結核患者数は18,280人、そのうち菌喀痰塗抹陽性肺結核患者(排菌している患者)が全体に占める割合は、39.0%と約4割でした。また、年齢階級別では、80歳以上が全体の38.3%とこれも約4割です。

結核を知る場合に大切なことは、「感染」「発病」「排菌」をはっきり区別して理解することです。結核菌の飛沫を吸入することにより空気「感染」しますが、「感染」したからといって、全ての人が「発病」するとは限りません。「発病」とは、感染した後に結核菌が活動を始め、菌が増殖して体の組織を冒してゆくことです。感染者10人中、発病者はおよそ1人未満です。症状が進行すると、せきや痰と共に菌が空気中に吐き出される(排菌)ようになります。ただし、「発病」しても「排菌」していなければ、他の人に感染させる心配はありません。

結核を疑う症状として、多くの場合初期症状は風邪と似ています。
2週間以上、咳や痰、微熱が続くようなら、他の呼吸器感染症やアレルギー性疾患と区別するためにも、早めに医療機関を受診しましょう。可能性から言えば、家庭や学校・会社・職域など規模の大小に関わらず、また交通機関や公共施設を利用する場合等、常に感染の危険性はゼロではありませんので、他人への感染ひいては集団感染を防ぐためにも、早期発見、早期治療が重要です。治療法は、3~4種類の抗結核薬の内服で、期間は基本的に6ヵ月間ですが、治療法をきちんと守れば完治可能な病気です。

一般的な予防法については、

①乳幼児への予防にはBCGが有効で、現在予防接種法により、生後1歳に至るまで(標準的接種期間は5ヶ月から8ヶ月まで)BCGを接種することとなっており、生後1歳までであれば費用は自治体等の負担で接種を受けられます。

②成人での予防は、まず社会人の基本的マナーとして、咳をする場合には口元をティッシュや布で押さえたり、またはマスクを着用する等の「咳エチケットを習慣化」することと同時に、定期健康診断を受診して胸部レントゲン写真のチェックが重要です。

BCGの結核予防効果は、10~10数年ですので、成人の結核に対する予防効果は高くないとされているため、成人では、免疫力が低下しないように規則正しい生活を心がけることや、栄養バランスのよい食事と十分な睡眠、適度な運動などが大切となります。

なお、結核菌は紫外線に弱く、体外に排出された菌は日光に当たると数時間で死滅しますので、この点から日光浴も大切です。さらに、特に高齢者、重症糖尿病等の易感染性疾患罹患者、HIV/AIDS感染者等、病気の療養中や病後などの一般的に体力が落ちて免疫力が低下している状態では、結核を発病しやすくなっているので感染した方は注意が必要です。

最後に、市中風邪やインフルエンザなどの呼吸器感染症予防対策全般に共通することとして、結核予防のためにも、うがい・手洗いのこまめな励行を通年にわたり心がけて頂くようお願いします。

再興感染症とは:WHO世界保健機関が定義した「既知の感染症で、既に公衆衛生上の問題とならない程度までに患者が減少していた感染症のうち、近年再び流行し始め、患者数が増加したもの」(感染症.com)。

ご精読ありがとうございました!

 

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