健診・人間ドックで見つかることもある、実は身近な抗酸菌感染症
医療法人社団 こころとからだの元氣プラザ
医師 伊藤 秀幸 監修
(元氣プラザだより:2026年9月号)
「抗酸菌(こうさんきん)感染症」という言葉をご存じでしょうか。抗酸菌は自然界に広く存在し、私たちのすぐそばにありますが、時に命に関わる病気を引き起こすことがあります。近年、健康診断や人間ドックをきっかけに発見されるケースが増えており、改めて注目されています。
抗酸菌とは?
抗酸菌とは酸に抵抗する性質を持つ細菌の総称で、大きく分けて「結核菌群」、「らい菌」およびそれら以外の「非結核性抗酸菌」の3つに分類されます。

ハンセン病の原因となる「らい菌」の新規感染は現在、日本国内では年間数名程度と極めて稀です。そのため、本稿では近年増加が顕著な「肺非結核性抗酸菌症」と、依然として警戒が必要な「肺結核」について解説します。
抗酸菌感染症-1 結核(過去の病気ではありません)
結核は、抗結核薬の普及やBCGの接種、公衆衛生の向上などにより減少傾向にあり、2021年にようやく世界基準の「低まん延国」となりました。しかし、決して「過去の病気」ではありません。現在でも国内で毎年約10,000人が新たに発症し、1,400人ほどが亡くなる、わが国の主要な感染症の一つです。とくに免疫力の低下した高齢者や、20代の若年層、外国出生者の患者割合が高い点が近年の特徴です。
抗酸菌感染症-2 非結核性抗酸菌症(急増するMAC症)
結核が減少している一方で、急増しているのが「非結核性抗酸菌症」です。原因となる菌は、水や土などの環境中に広く生息しており、その種類は200種におよびます。人に病原性を示す菌は約50種類で、菌を含んだほこりや水滴を吸い込む、汚染された水や食物を口にする、皮膚の創などの経路で感染すると考えられています。
なかでも「マイコバクテリウム・アビウム」と「マイコバクテリウム・イントラセルラー」の2種による感染症は、総称してMAC(マック)症と呼ばれ、日本の肺非結核性抗酸菌症の約80-90%を占めています。非結核性抗酸菌は結核菌とは違い、基本的に人から人へ感染することはありません。
かつては肺に持病のある人に多い病気でしたが、近年は持病がなく、免疫力も正常な「中高年の女性」を中心に急増しており、日本の罹患率は世界的に見ても高い水準にあります。

どんな症状がみられるか?
おもな症状には、咳や痰(血痰)、発熱、全身倦怠感、寝汗などがありますが、初期は自覚症状がないことも多く、健康診断や人間ドックの胸部X線検査で異常を指摘される人が近年増加しています。症状のみで結核と非結核性抗酸菌症を区別することは困難です。
どんな検査で診断されるの?
胸部X線検査や胸部CT検査で特徴的な影を見つけます。確定診断には痰を培養して菌の種類を特定する痰の検査を行いますが、非結核性抗酸菌は自然環境や水などに広く生息しており菌が紛れ込む可能性があるため、複数回行います。うまく痰が出せない場合には、気管支鏡検査により痰を採取することもあります。
抗酸菌は成長が遅いため、結果が出るまでに最長で8週間(約2か月)程度かかる場合もあります。
治療方法は?
結核
結核は人から人へ感染するため、痰に結核菌が含まれている場合(「排菌」といいます)、入院治療が必要となることがあります。専門の医療機関に入院して治療(抗結核薬)を受け、排菌しないことが確認されれば退院して通院治療となります。
非結核性抗酸菌症
一方で非結核性抗酸菌症は人から人への感染はありませんので、通院治療になります。
結核と同じように抗結核薬や抗生物質を組み合わせた内科治療を行いますが、結核と比べ薬の治療効果が低いことが多く、長期内服による副作用と治療効果を天秤にかけた治療方針が検討されます。したがって軽症では経過観察が選択されることもあります。近年では新規治療薬も登場していますので、治療開始のタイミングや治療内容には専門的な判断が求められています。
抗酸菌感染症を予防するために
結核
結核は人から人へ空気感染するため、早期発見と早期治療が重要です。咳や痰、微熱などの症状が2週間以上続く場合は医療機関を受診しましょう。また、定期的に健康診断や人間ドックを受けることで早期発見につながります。
非結核性抗酸菌症
非結核性抗酸菌は土壌や水回りなど身近な環境中に広く存在しているため、現時点では感染を完全に防ぐ予防法はありません。
感染リスクを低減するため、浴室では換気を徹底し、シャワーヘッドを定期的に清掃、乾燥させましょう。また、土いじりや園芸作業を行う際は、マスクを着用することが推奨されています。これらの対策により、環境中の菌への曝露を減らす可能性があります。
早期診断と正しい治療のために
抗酸菌感染症の原因菌は、私たちの身近に潜んでいます。自覚症状がなくても、定期的な健康診断や人間ドックを受けることが、早期発見と適切な治療への第一歩です。気になる症状がある方や、検査で異常を指摘された方は、早めに専門医(呼吸器内科)へ相談しましょう。当法人では、健康診断や人間ドックのほか、呼吸器内科の受診も可能です。
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参考資料
政府広報オンライン:「結核」に注意!古くて新しい感染症、日本では毎年約10,000人が新たに発症!
厚生労働省:結核
ご精読ありがとうございました!