過労死を防ぐために大切なこと~疲労とストレスにいのちを奪われる前に
医療法人社団 こころとからだの元氣プラザ
統括所長 中村 哲也 監修
(元氣プラザだより:2024年11月号)
「過労」。この言葉に思い当たる方もいるのではないでしょうか。過労を放置するとさらに恐ろしい「過労死」にもつながります。過労死に密接に関係するのが「ストレス」です。ストレス社会といわれる現代は、多くの人が日常的にストレスを抱えて生活しています。
過労死は、本人はもとより、その家族のみならず社会にとっても大きな損失です。今回はこれらが原因となりうる「過労」と「過労死」について見ていきましょう。

過労、過労死とは
一般的に、「疲労」は休息や休憩、睡眠や余暇により回復できますが、疲労が回復を上回る状態が「過労」といえます。労働において過労の状態になると、仕事でミスが増える、仕事以外でもやる気が起きない、周囲とのコミュニケーションもうまく取れなくなるなど、生活の質が悪化していき、健康が損なわれます。この状態から、さらに仕事などによるストレスが重なり死につながることを「過労死」といいます。
過労 … 労働による疲労が回復を上回る状態
過労死 … 労働での過剰な負荷により発症した疾患や精神障害を要因とする死亡
法律上は「過労死等」という呼称で呼ばれ、以下のように定義されています。
<過労死等防止対策推進法第2条による「過労死等」の定義>
●業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡
●業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
●死亡には至らないが、これらの脳血管疾患・心臓疾患、精神障害
この法律は過労死等が大きな社会損失につながるとし、平成26年11月に施行されました。「過労死等がなく、仕事と生活を調和させ、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現に寄与すること」を目的としています。
過労の原因と心身への負荷
原因として、次のことが挙げられます。
●継続的な長時間労働からの睡眠不足による疲労の蓄積
●短期間でも業務集中により不眠不休で仕事をする
●業務関連の人身事故や自然災害などを含む重大事故への遭遇による急な心身の負担
精神的な疾患の場合は、より複雑に関連しているとされます。
●業務による心理的負荷(事故や災害、仕事の失敗や過重な責任、仕事量・質、対人関係 など)
●業務以外の心理的負荷(自分自身や家族や親族のできごと、金銭関係、事件・事故・災害)
「業務上の過剰な負荷や強い心理的負担」や「ストレスと過労死等」との関連において分かっているのは、実際の年齢よりも早い段階で血管の傷みが起こり、脳や心臓の疾患が発症しやすくなるということです。過重労働による睡眠時間の減少、緊張で心が休まらないことによる血圧上昇、ホルモンバランスの乱れなどが、血管を傷つけてしまうのです。
上記のような「過労」の状態を続けていると、さまざまな疾患を引き起こし「過労死」につながる可能性が高まります。
労働時間の削減が重要
過労死等を起こさないためにできることはさまざまあり、近年では事業主、労働者の取り組みとして、以下の内容が行われています。
対策で最も重点的に取り組むべきことは、脳・心臓疾患や精神障害のいずれにも関連する、長時間労働の削減です。
厚生労働省では、残業時間(時間外労働)が月45時間以内であれば健康障害のリスクは低くなるが、時間が長くなるほどにリスクが高まり、月100時間超または2~6か月平均月80時間を超えると、過労死のリスクが高い危険な水準であることを発表しています。
この基準は一般に「過労死ライン」と呼ばれています。
また、2019年から始まった勤務間インターバル制度は、勤務終了から翌日の始業までの間、一定時間以上のインターバル(休息時間)を設けることで睡眠時間や生活時間を確保する働き方が期待できます。
厚生労働省では毎年11月を「過労死等防止啓発月間」としてさまざまな啓発活動を行っており、「しごとより、いのち。」という啓発冊子も公開しています。
長時間労働削減のためには、事業主側の積極的な業務改善とともに、労働者側も適切な労働時間や休暇をとることで自身の健康管理に努め、健康に仕事が続けられる努力が求められるのです。
まずは、ご自分や家族の体や心の状態に気づくことから
心身ともに健康に仕事を続けるためには、自身の働き方について考えること、そして自身や大切な家族の心身の健康状態に気づくことが大切です。特に精神障害は複雑に関連して過労死などに進展することがわかっています。
まずはご自身あるいは家族の働き方について、セルフチェックしてみましょう。
▶厚生労働省「こころの耳」働く人の疲労蓄積度セルフチェック2023(働く人用)
▶厚生労働省「こころの耳」働く人の疲労蓄積度セルフチェック2023(家族支援用)
健康状態について気がかりなことがあれば、職場の他の同僚や上司、人事部門、産業医や保健師、カウンセラーなどに速やかに相談しましょう。

こころとからだの元氣プラザの精神科外来では、状況を丁寧にヒアリングし、ご希望を加味しながら、生活へのアドバイスやお薬での治療など、受診者様に合った治療を一緒に考えていきます。
こころの不調を少しでも感じる方は、お気兼ねなくご相談ください。
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ご精読ありがとうございました!