「よりよい眠り」のためのPoint4
医療法人社団 こころとからだの元氣プラザ
呼吸器科医 伊藤 秀幸
(元氣プラザだより:2024年9月号)
夜には秋の気配が感じられるようになってきましたが、ぐっすりと眠ることができていますか?
最近は睡眠に関する関心が高くなり、不眠症とはいわずとも、眠りについて「満足です」という人は少ないのが現状です。健診の生活チェック欄をみていても、「やや不満」にチェックしている人が目につきますね。
眠りには個人差がありますので、一概に時間で判断することは難しいのですが、私たち日本人は世界でも有数の「短時間睡眠」なのだそうです。
東京で暮らす人の平日の平均睡眠時間は5.59 時間で、世界の他都市と比べ断トツで少ないという報告もあります。
睡眠は「時間× 質」で規定されますので、時間が短いのであれば質を高めて「よりよい眠り」を確保しましょう。
Point1 寝入りばな最初の90分がポイントです
ヒトは眠りに落ちてから目覚めるまで、ずっと同じように眠っているわけではありません。
睡眠には、レム睡眠(脳は起きているが体が眠っている睡眠)とノンレム睡眠(脳も体も眠っている睡眠)の2 種類があり、これらを90 分くらいで繰り返しながら眠っています。
寝ついたあと、すぐに訪れるのがノンレム睡眠です。その最初のノンレム睡眠が睡眠全体のなかでも最も深い眠りなのです。その後、朝にむかってレムとノンレムを繰り返しますが、眠りは徐々に浅くなります。
最初の深いノンレム睡眠がしっかりとれていれば、全体の睡眠時間が多少短くても「よい眠り」が得られていることになるのです。
Point2 寝る60 分前にゆっくりお風呂に入りましょう
最初の深い睡眠をしっかりとるために、「寝る60 分前の入浴」をおすすめしたいと思います。
睡眠と体温(ここでいう体温とは深部体温です)は非常に密接な関係があります。ヒトは覚醒時には体温を上げ、睡眠時は体温を下げています。深部体温が下がったところで入眠するのです。
赤ちゃんが眠くなったサインは手がポカポカしてくることだといいますが、実は手足の温度を上げて、熱を放散して深部体温を下げているのです。
これと同じように、まずお風呂でいったん深部体温を上げ、その後、反応性により下がってくる頃(60 ~ 90 分かかります)にスムーズに入眠できるという仕組みです。温泉でもいいのですが、強すぎる温泉や高い温度では、交感神経が活性化されて逆効果になることもありますので注意しましょう。
Point3 寝る前のスマホ厳禁!!
体温が理想どおりに変動しても、それだけでは眠れません。悩みごとや、寝る直前までの仕事、またスマホで脳が興奮していれば、なかなか入眠できませんし、睡眠の質も確保できません。いかに脳の興奮スイッチを切るかがポイントです。
寝る前のルーチンを決めるというのもいいかもしれません。いつものベッドでいつもの時間に、いつもどおりのパジャマでいつもの照明と室温で寝る。寝る前に音楽を聴くならいつも同じ単調な曲。アロマなどを利用するのもいいですね。
ポイントは単調なこと。スマホは厳禁と心得てください。
Point4 実はあなたも?睡眠時無呼吸
睡眠の質に関してもうひとつ話題を提供します。
自分ではよく眠っていると思っているのに、なぜか日中眠い。寝覚め感が悪い。イビキを指摘される。こんなことはありませんか?
そんな時は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査をしてみるべきです。
日本人は欧米人に比べて顔が平たくあごが小さい人が多いので、解剖学的にもSAS が多いといわれています。必ずしも太った男性のみの病気ではありません。痩せた人や女性にも多いのが特徴です。口呼吸による舌根沈下が主な原因とされています。
CPAP(シーパップ:経鼻的持続陽圧呼吸療法)という画期的な治療法もありますので、心あたりのある方は、ぜひ「元氣プラザ外来で」検査をしてみましょう!
当法人では、自宅でできる睡眠時無呼吸症候群の簡易検査のご用意がありますので、お悩みの方はお気軽にご相談ください。
▶自宅でできる睡眠時無呼吸症候群検査
ご精読ありがとうございました!