11月14日は「世界糖尿病デー」その② ~糖負荷試験とは?~
医療法人社団 こころとからだの元氣プラザ
糖尿病内科医 堀内 鳩子
(元氣プラザだより:2023年11月号)
毎年11月14日は、インスリン(膵臓から分泌される血糖値を下げるホルモン)を発見したカナダ人、バンディング博士の誕生日にあやかって、「世界糖尿病デー」と指定されており、世界各地で、糖尿病の啓発イベントが行われます。日本では、11月14日を含む1週間(2023年は11月12日~11月18日)を「全国糖尿病週間」として、啓発イベントが実施され、著名な建造物がシンボルカラーであるブルーにライトアップされます。糖尿病の方も、そうでない方も、糖尿病についての理解を深めていただければ幸いです。
今回は、人間ドックや健康診断、他の生活習慣病で通院中の方で、血糖値が高めになってきた方にお勧めしている、糖負荷試験についてお話ししたいと思います。
75g経口ブドウ糖負荷試験とは
Q. 検査のやり方は?
A. 微炭酸のブドウ糖液(75gのブドウ糖を含む)を飲みます。
飲む直前、30分後、60分後、120分後に血液検査を行い、血糖値の変化を調べます。
Q. どんなことがわかる?
A. 空腹時のみならず、糖分をとった後に、血糖値がどれくらい上昇するかを調べることができます。結果は、下記の通り、ブドウ糖を飲む直前(0分)と飲んだ後120分の血糖値で3つの型に分類され、1回だけ血糖値を測った時と比較して、より詳しくご自身の糖代謝の状態を把握することができます。同時にインスリン値も測定した場合は、インスリン分泌の様子についても知ることができます。
①正常型:今のところ糖尿病の心配はありません。
②境界型:糖尿病予備軍で、動脈硬化の病気(狭心症や心筋梗塞など)のリスクが高くなります。
③糖尿病型:糖尿病の疑いが濃厚で、動脈硬化の病気とともに、糖尿病の三大合併症(網膜症、腎症、神経障害)に注意が必要です。
尚、①②のうち、糖負荷試験の60分での血糖値が180以上の場合は、糖尿病への移行リスクが高くなるため、注意が必要です。
Q. どんな人が受けるのがおすすめ?
A. 日本糖尿病学会では、概ね、下記を目安としています。
強く推奨する:
空腹時血糖値が110~125mg/dl
随時血糖値が140~199mg/dl
HbA1cが6.0~6.4%
行うことが望ましい:
空腹時血糖が100~109mg/dl
HbA1cが5.6~5.9%
上記を満たさなくても、濃厚な糖尿病の家族歴や肥満が存在する。
Q. 75gの糖って…?
A. ブドウ糖は1gあたり4kcalのカロリーがあるため、75gのブドウ糖のカロリーは、4×75=300kcalです。身近な食べ物で、300kcalの例として、炊飯後の精白米だと192g(*1)になります。この量は、一般的なサイズのご飯茶碗の大盛り1膳です。
従って、ブドウ糖75gのカロリーは、ご飯茶碗大盛り1膳分のご飯のカロリーと同等となります。
参考文献
糖尿病治療ガイド 2022-2023 日本糖尿病学会 編・著
糖尿病治療の手びき 2023 日本糖尿病学会 編・著
(*1)食品成分表データベースより、精白米(炊飯後)は可食部100gあたり156kcal
ご精読ありがとうございました!