11月14日は「世界糖尿病デー」
医療法人社団 こころとからだの元氣プラザ
糖尿病内科医 堀内 鳩子
(元氣プラザだより:2022年11月号)
毎年11月14日は、インスリン(膵臓から分泌される血糖値を下げるホルモン)を発見したカナダ人、バンティング博士の誕生日にあやかって、「世界糖尿病デー」と指定されており、世界各地で、糖尿病の啓発イベントが行われます。日本でも、11月14日前後の日程で、啓発イベントが実施され、著名な建造物がシンボルカラーであるブルーにライトアップされます。糖尿病のかたも、そうでないかたも、糖尿病についての理解を深めていただきたい日です。
人間ドックや健診で、糖尿病や血糖値に関して、以下のような質問をたびたび受けます。
Q:糖尿病と言われても、なにも症状はなくて元気です。治療しないといけませんか?
A:高血糖による症状は、口渇・多飲・多尿などがありますが、これらは、血糖値が概ね350mg/dl以上になったときに出る症状で、それ以下の場合はあまり症状はありません。症状はなくても、血糖値が高い状態、糖尿病のコントロールが悪い状態が続くと、全身の血管が傷んでしまい、動脈硬化性疾患※1を発症したり、糖尿病の3大合併症※2が進んでいきます。
また、糖尿病のコントロールが悪いと、新型コロナウイス感染症を含む、感染症が重症化しやすくなります。症状がないから大丈夫、ではなく、高血糖の症状が出る前から、糖尿病の治療をすることが大切です。
Q:「境界型」、「糖尿病予備軍」って、まだ糖尿病ではないから大丈夫ですよね?
A:空腹時血糖値110~125mg/dl、または、糖負荷試験※3で2時間後の血糖値140~199mg/dlを「境界型」と言います。糖尿病の三大合併症のリスクは、主に糖尿病の診断がついてから高くなりますが、動脈硬化性疾患のリスクは、境界型のうちから高くなります。特に、肥満や高血圧、脂質異常症等を合併している場合、境界型でも動脈硬化性疾患のリスクは高くなります。
空腹時血糖値および糖負荷試験による判定区分
Q:HbA1cは毎年基準値より少し高いけれど、空腹時血糖値は正常、どう考えたらよいですか?
A:HbA1cは最近1~2か月間の血糖値を反映する指標で、採血をしたその時以外の血糖値の状況を推測することができます。HbA1cは少し高め、空腹時血糖値が正常の場合、以下のような場合が考えられます。
①空腹時血糖値と食後血糖値の差が大きい。
食後の血糖値が上昇する食後過血糖の可能性があります。特に、糖尿病の初期や境界型では、空腹時血糖値は正常で、食後血糖値のみが上昇していることが多いです。食後過血糖は、動脈硬化性疾患のリスクになります。食後過血糖を是正する生活習慣として、食事はゆっくり食べる、野菜などの食物繊維を含む食品を食事の前半に食べる、食後に運動する等がお勧めです。
②健診や外来受診の直前のみ、普段よりも食事に気を付けていた。
直前数日間のみ、普段よりも食事を気を付ければ、血液検査をするときの血糖値はよくなる場合もありますが、検査を受けた時だけ血糖値がよくても、普段の血糖値が高ければ、むしろ心配です。検査前は、普段通りの食生活をして検査を受けましょう。
※1 動脈硬化性疾患:脳梗塞、脳出血、心筋梗塞、狭心症など
※2 糖尿病の3大合併症:網膜症、腎症、神経障害
※3 糖負荷試験:75gブドウ糖負荷試験 微炭酸のブドウ糖液を飲み、30分おきに2時間後まで血糖値を調べる。
ご精読ありがとうございました!