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健康コラム

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シリーズ連載「作ろう!適正飲酒の生活習慣 その2」(全3回シリーズ) ~ 適量を超えてお酒を飲み続けると、どんなことが起こる? ~

医療法人社団こころとからだの元氣プラザ

統括所長 及川 孝光

(元氣プラザだより:2020年11月号)

短期的な弊害

飲み過ぎの弊害として身近なのは、二日酔いですね。前述のアセトアルデヒドが、頭痛や気持ち悪さなどの不快感を引き起こしています。当たり前ですが、二日酔いで仕事に臨むのはよくありません。脳の活性が落ち集中力や判断力がなくなるので、ミスが非常に多くなるのです。業務評価にも影響します。


もう一つ、ニュースなどでもよく報道されるのが、急性アルコール中毒です。短時間に大量の飲酒をすることにより、アルコールの血中濃度が急激に上昇して脳に影響を及ぼし、意識障害と呼吸器・循環器の中枢障害を引き起こします。不幸にも、急性アルコール中毒で亡くなる方が今でも後を絶ちません。学校や職場の責任も重大だと思います。


長期的な弊害

飲み過ぎの生活習慣を続けていくと、皆さんの本分である仕事や学業にも悪影響を及ぼしかねません。大量飲酒は、長期的にはさまざまな疾患を引き起こします。アルコールは生活習慣病対策のなかでも最も基本的な一次因子ですし、大量飲酒は非伝染性疾患の重要な不健康習性の一つです。

生活習慣病の因子の表

4つの重要な不健康習性の表


その領域は生活習慣病から、がん疾患、筋骨格系疾患、精神科疾患、乳腺・婦人科疾患などにまで及び、私たちが直面するほとんどの疾患が飲酒と関連します。これには、肝臓、膵臓、脂質代謝、糖代謝、尿酸、貧血などアルコールが直接の影響を及ぼす疾患群と、これら直接の影響に加え食事内容、栄養の偏り、喫煙など他の危険因子が間接的に影響を及ぼして発症につながる疾患群があります。いずれも重篤で、治療が困難な病気も多数含まれています。


アルコール関連疾患の表


飲酒関連疾患には、必ず複数の疾患が合併して発症するという特徴があります。特に、ヘビースモーカーの大量飲酒は最悪です。重篤な脳・心臓疾患発症のリスクが増大し、食 道がんなどの発がんリスクが急増します。 また、大量飲酒者の脳は、前頭葉を中心に委縮が見られ、脳の老化や認知障害につながります。


しかし、早期に節酒や断酒ができれば、脳容積も回復します。 アルコール依存症のリスクも高まります。アルコール依存症とは、連続飲酒が習慣となり、やめると禁断症状が現れ、精神的にも身体的にもお酒へ依存してしまう病気です。

依存症になってしまうと、非常に大変です。朝から飲み出してしまい仕事ができなくなるばかりか、暴力沙汰から離婚や家庭崩壊にまで至ってしまいます。うつ状態を伴って自殺のリスクも高まります。うつ病の方々は休養治療が原則ですが、依存症者に仕事を休ませるというのは、なかなか悩ましいものです。自宅休養によって職場や仕事という足かせがないので、朝からどんどんお酒を飲んでしまいます。本当は、依存症者ほど仕事を休ませず、職場へ通わせるべきです。しかし、なかなか職場の理解が得られないという実情があります。


依存症になってしまってからでは、遅いのです。われわれも一次予防(発症予防)や二次予防(進行予防)をしっかりと行い、今以上に適正飲酒を啓発し続けていかなければなりません。危険飲酒の早期発見と介入、その前段階にある飲酒教育の重要性を訴え続けたいと思います。



現代飲酒の問題点

適正飲酒の生活習慣を妨げる、現代飲酒の問題点について見ていきましょう。まず、お酒の位置付けが大きく変わってきています。昔は、たしなむものであり、交流を深めるためのものでした。


しかし、現代は薬物と同じような使われ方、飲まれ方をされている傾向があるように感じています。手っ取り早くハイになれますし、ストレスも解消できる。簡単に手に入れられますし、しかも合法で、事件でも起こさない限り職場や学校、家庭では大きな問題になりません。

労働環境の変化

その背景には、労働環境の変化があると考えています。経済が停滞してきたところに、アメリカ的成果主義が入ってきて、皆若いころから競争にさらされています。昔と比べると、コミュニケーションが希薄な、ドライで厳しい職場環境になってきているのです。仕事も忙しくて、人によっては長時間残業も日常茶飯事でしょう。


今、一番大変なのが、中間管理職の方々です。サンドイッチ症候群といわれていますが、上層部からは成果を求められ、部下はマイペースで指示通りにやってくれない。責任とリスクばかり増えて、それに見合った権限がないと嘆く人もいます。新人の面倒を見る余裕のない上司も多くなっているようです。


このような状況ですので、厚生労働省の平成30年「労働者健康状況調査」によると、強い不安、悩みストレスを感じている労働者は全体の約6割にも達しています。職場の人間関係、仕事の質・量、仕事の適性、会社の将来性(男性)、雇用の安定性(女性)などが挙げられ、多くの人が職場のストレスで悩んでいることがわかります。


現代飲酒の傾向

労働環境が厳しくなり、多忙を極め、将来への希望をなくすと、健康管理への意識が希薄になります。すると、平日でもつい飲み過ぎてしまったり、週末に羽目を外し過ぎて大量飲酒してしまったりするのです。


これは、肥満も同じです。忙しい営業職の人が、昼間に10分で食事を済ませ、深夜の帰宅後にビールを飲みながら高カロリーの弁当をかき込んですぐに寝てしまう。これでは、太ってしまうのも当然ですよね。残業が多く生活にゆとりがないと、趣味や休養の時間がなかなか取れません。そういう人は、深夜に帰宅してから飲むお酒が唯一の楽しみだったりします。お酒しかストレス解消の手段がないのです。お酒を飲まないと眠れなくなってしまった、いわゆるプレアルコーリック(アルコール依存症の前段階)の人が、私の外来にもけっこう来ています。


また、本年3月からのCOVID-19感染症拡大によって、在宅勤務をされておられる方も多いでしょう。在宅の安心感から、ついつい飲酒量が増えておられる方も多く拝見します。運動不足、摂取カロリーの増加、飲酒量増大で体重が増えて生活習慣病の悪化が懸念されます。生活リズムの調整、外出してできるだけ歩くこと、自宅での体操などリフレッシュは必須です。皆様も新しい働き方に適した健康管理をぜひご自分で工夫して実行してください。

 

元氣プラザだより12月号掲載 シリーズ連載「作ろう!適正飲酒の生活習慣 その3」につづく



ご精読ありがとうございました!


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