心不全(心臓機能不全)
医療法人社団 こころとからだの元氣プラザ
名誉所長 内科医 髙築 勝義
(元氣プラザだより:2019年1月号)
心不全とは
心臓のポンプ機能が低下し、体の各臓器(脳、腎、肺、肝など)へ血液を十分に送り、また回収することが出来なくなった状態をいいます。
心臓が十分に収縮できない(収縮不全)ばかりではなく、十分に拡張できない(拡張不全)ためでも、心不全になります。
心臓の収縮不全の原因は、心臓の筋肉活動を維持する血流不足である虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)や、心臓の筋肉の病気である心筋症などです。
心臓の拡張不全の主因は高血圧であり、心臓が少し硬くなった状態と考えればよいでしょう。収縮不全と比べると、高齢者や女性に多くみられ、また、予後(疾患の先々の良し悪し)は比較的良好ですが、肺うっ血を起こし易く、入退院を繰り返すことがあります。
心不全の症候は軽いうちは気づかれませんが、重くなるに従って、ちょっとした坂道歩行で息切れがするようになり、脚にむくみを生じ、夜間床に入って咳が出たり、発作性の夜間呼吸困難や、半ば体を起こして呼吸しないと苦しくなる状態(起坐呼吸)になります。
心不全の重症度
心不全の重症度に関してはニューヨーク心臓協会NYHAが提唱した有名な4分類があります。
概略は次の通りです。
心不全にみられる組織学的所見としては、心筋細胞の肥大や線維化(肝臓でいえば肝硬変)です。
早期発見のためには
さて、症状がない初期のうちで、心不全に向かっている状態は、どうしたら探り出せるのでしょうか。心臓は自らのポンプ仕事に支障をきたすようになると、何とか仕事を全うしようとするのです。
例えば5リットルの血液を循環させているとすると、4.5リットルに減らして仕事をしようとします。そのために心臓は一種の利尿ホルモンであるBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)を血中に出して尿量を増加させ、ポンプ作用で循環させる血液量を減らし仕事を全うします。よって、心臓の力が弱れば弱るほどBNP値は増加してきます。BNP値は心臓の現状を知る一つの方法です。また、心臓超音波検査(心エコー)で侵襲を受けることなく心臓の状態が分かります。
急性心不全と慢性心不全
心不全には急性と慢性が有ります。急性心不全になる原因疾患は、心筋梗塞や不整脈そして肺塞栓(エコノミークラス症候群などで血の塊りが肺の血管を塞ぐ疾患)などです。急な血流異常により、呼吸困難になったり失神したりします。慢性心不全では、原因疾患のため、全身の臓器が循環障害を受け続け支障を来たします。
不全とはその臓器の機能が低下し、機能ゼロに向かっている状態です。例えば、腎不全は腎臓の機能が低下し、血液中に有害物や不用物が溜まり、命にかかわることになります。カリュウムが多くなると心停止になります。肝不全では有害物、例えばアンモニアを分解・解毒できないと、肝性脳症を引き起こし早晩死に至ります。
心不全も心臓の窮極の状態です。何とかここに至らないようにしたいものです。虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、不整脈、高血圧など原因となる疾患をきちんと診断・治療しておくことが大事です。慢性心不全の治療は、悪化させないことが第一になります。
ご精読ありがとうございました!