大腸がんを早期発見するために
医療法人社団こころとからだの元氣プラザ
消化器内科医 部長 丸山正隆
(元氣プラザだより:2015年9月号)
増加傾向にある大腸がん。定期的な便潜血検査を
わが国における死因別死亡率のトップが「がん=悪性新生物」であることはよく知られていますが、近年顕著なのが大腸がんの増加です。
おもな部位別の癌による死亡率を見てみると、男性の場合、従来多かった胃がんに代わり、近年は肺がんが圧倒的に増えて、2009年には胃がんは2番目となり3番目に多いのが大腸がんになっています。女性の場合はもっと顕著で2009年には大腸がんがトップになりました。
大腸がんはポリープと呼ばれる腸壁の突起物がもとになることが多いのですが、そのポリープなどの病変を見つけるのに一番簡便な検査が便潜血検査(= 検便)です。便に混ざっている血液の量を測ることで、大腸の精密検査の必要性を判断する検査です。従ってこれが陽性だからといって大腸に病気があると決 まったわけではありません。
便潜血反応は通常の場合結果が陽性・陰性で出ています。ところが実際には便に含まれる微量の血液の量をナノグラム(10億分の1グラム)単位で測っ ていて、その量が基準値以上だと陽性になるのです。そして本当はその量が問題なのです。ですから、もし結果が陽性であっても、もう一度検査を受けて今度は 血液の量を数値で出してもらい、その量で大腸の精密検査をするかどうか判断してもらうといいでしょう。
内視鏡(大腸鏡)検査とレントゲン検査、どちらにもメリットがある
大腸の検査を行うためには大腸の中の便をすべて出して、空にしなくてはなりません。内視鏡検査では腸 から吸収されないように調整された大量の水で洗い流してきれいにする方法がとられています。2リットルの塩辛い水を飲む、1.8リットルのポカリスウェッ トのような味の水を飲む、錠剤を飲みながらお茶などを飲むといったやり方があり、1時間から2時間半で大腸が検査できるようになります。
内視鏡検査はごく小さな病変まで見つけることができますが、大腸は曲がっていたり、しわが深いのでその陰などにある病変はときに見落とされてしまう こともないとはいえません。時には大腸が長くて奥まで入らなかったり、検査中に痛みなどがあることもありますが、癌のもとになるポリープはそのまま切除す ることができ、治療にもなります。
レントゲンの場合はおしりからバリウムと空気を入れて撮影しますが、病変がどこにあるかという位置の特定が正確にできます。大腸をきれいにする方法 も前日にカスの残らない食事にして下剤を飲むだけです。腸が長くても一応奥までの検査ができ痛みなどはありません。しかし何か病変が見つかったとき治療な どはできないので、もう一度大腸鏡検査を受けなければなりません。どちらの検査がいいかは医師とよく相談するのが良いでしょう。
大腸がんはポリープのうちに除去することで予防できる可能性が高いので、ポリープの早期発見が肝心です。これには定期的な便潜血反応検査が大切です。
大腸がんは遺伝性の高い病気だが、定期検診で死亡率は下がる
日常生活の中で大腸がんにかからないように心がけるとしても、刺激物を避けることや、便通を規則的にするようにするといった程度のアドバイスしかありません。
それよりも、大腸がんには遺伝的要素がかなりあることが分かってきました。両親や血縁者で40歳台くらいまでに大腸がんになった方がいらっしゃる場合は注意が必要です。またポリープは一度あった方はまたできる可能性が高いので、定期的に大腸鏡を受けることが大切です。
とにかく早期発見さえできれば死亡率は減らすことが可能です。便潜血検査の定期検診を心がけてください。
ご精読ありがとうございました!