ALTとAST
医療法人社団こころとからだの元氣プラザ
名誉所長 内科医 高築 勝義
病気により数値比に特色
ALTは以前GPTと呼ばれていた酵素で、肝臓の細胞などに多く含まれています。肝炎ウイルス・アルコール・薬など何らかの原因で肝細胞が壊れると、血液中にこの酵素がもれ出てきて、採血して調べると高値を示します。30以下ならまず問題ありませんが、値が高くなるほど多くの肝細胞が壊れています。
急性肝炎では、数百から千以上になることもあり、命に関わることが多い劇症肝炎では、千から1万に達することもあり、当然入院が必要です。慢性肝炎では40~50から数百になります。先にも触れましたように、細胞が壊れているときにこの酵素がもれ出てくるのであって、病気があってもその病気の活動性が激しくなければ、一見数値上は正常を示すこともあります。
進行した肝硬変などで肝細胞の数が減り、壊れる細胞が少なくなってしまっていると、数値はあまり上昇せず病気が見落とされる危険性がありますが、別の検査で、血小板が減っていないか、たんぱく質やコレステロールの値が低くないか、また、腹部超音波検査で肝臓の形態に異常はないか等で正しい診断がなされます。
ASTもGOTと呼ばれていた酵素です。この酵素は肝臓の細胞ばかりでなく、心臓の筋肉細胞や骨格筋の細胞にも多く含まれており、心筋が壊れる心筋梗塞では数百になることもあり、また、激しい運動(長距離走など)を続けると上昇することがありますが、肝臓が関係ない場合には、ALTはあまり変化を示さず鑑別がつきます。問診で運動歴を確かめたり、心電図検査により、筋肉由来かどうかがより明確になります。
ASTの基準値は40以下で、肝臓疾患でもALT同様上昇してきますが、病気により特色があります。慢性肝炎ではALTが優位であり、肝硬変、肝細胞がん、アルコール性肝炎などではASTが優位となる傾向があります。
(元氣プラザだより:2022年1月号更新)
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