乳がん・子宮頸がん検診を受けよう
監修: 医療法人社団 こころとからだの元氣プラザ
副所長、婦人科部長 大村 峯夫
(元氣プラザだより:2022年3月号)
自治体や健康保険組合が実施している乳がん・子宮頸がん検診。受診率は3~4割程度に とどまるといわれています。検診の内容や必要性について解説します。
初期は症状がない。検診で発見を
女性のがん「乳がん」「子宮頸がん」になる(罹患する)人の数は増加傾向にあります。
乳がんは30代後半にふえはじめ、40~60代で多く、子宮頸がんは20代後半にふえはじめ、30~40代で多くなっています。どちらも早期に発見できれば、生存率が高くなるのはもちろん、からだに負担の少ない治療で治すことができます。
ただし、初期はどちらも自覚症状がみられないため、早期発見するには検診を受けることが大切です。検診に不安や抵抗感がある、受ける時間がない、という人も多いですが、検診で早期発見するメリットは大きいものです。自分や家族のためにも、主体的に検診を受けてください。
子宮頸がんの原因は、性交渉で感染するヒトパピローマウイルス(HPV)であることがわかっています。HPVは感染しても排除されることが多いのですが、排除されずに感染が長くつづいた場合に、前がん状態を経て子宮頸がんとなります。早期に発見すれば、子宮を温存する治療が可能となります。今後妊娠・出産を希望する世代の人もぜひ検診を受けてください。
乳がん
基礎知識
母乳を作る「乳腺」にできるがん。ある程度大きくならないとしこりなどとして感じられないため、初期には症状が現れにくい。
検診の対象・間隔・方法は?
40歳以上/2年に1回 問診およびマンモグラフィ(乳房X線検査)
※視触診が行われる場合もある。
マンモグラフィとは?
乳房を挟んでレントゲンで撮影すると、がんの部分(しこりになる前の初期状態含む)が白く写る。乳腺が発達していて見えづらい40代では2方向(斜め・水平)撮影する。
ドクターからアドバイス
乳がん検査には、ほかに超音波検査もあり、マンモグラフィで乳腺濃度が高い場合はとくに有効です。血縁の家族が乳がんになったなど、乳がんの心配がある場合は、原則自費ですが、40歳未満でも超音波検査をお勧めします(40歳以降はマンモグラフィと併用か、毎年交互に受けるのもお勧め)。また、検診と検診の間に発生するがん(中間期がん)を発見するために、月に1回のセルフチェックを行い、何か異常に気づいたときには、検診を待たずに乳腺科を受診してください。
乳がんセルフチェック
月経の時期を避けて、月に1回(月経終了から1週間後など)入浴時に行ってください。変化をみるために毎回同じ方法で行うことが大切です。
1. しこりチェック
石けんなどを泡立ててつけ、乳首を中心に指の腹で小さな円を描くように動かし(円を描かず、さするだけでもOK)、乳房にしこりがないかを確認する。鎖骨付近や腋の下など、全体をくまなく調べる。
2. 分泌物チェック
からだを洗い流してから、乳首の周りを押して分泌物がないかを確認する。乳がんの場合は、血が混じった分泌物が出ることがある(このときに気づかなくても、下着に血液のようなしみがつく場合は受診を)。
3. 見ためチェック
お風呂上がりに鏡の前で腕を上げた状態、下げた状態でそれぞれ次の点を確認する。
● 乳房にくぼみ(えくぼのようなもの)、ひきつれなどの変化がないか
● 乳首の陥没、ゆがみ、ただれなどの変化がないか
子宮頸がん
基礎知識
子宮の入り口(子宮頸部)にできるがん。初期は無症状で、進行するとおりものの変化や不正出血、腰の痛みなどの症状が現れる場合がある。
検診の対象・間隔・方法は?
20歳以上/2年に1回 問診、視診、子宮頸部の細胞診および内診
※必要に応じてコルポスコープ検査(腟拡大鏡を使って観察)が行われる。
※問診の結果、半年以内に不正出血などの症状がある場合は、検査のため医療機関の受診をすすめられるか、同意があれば子宮体部の細胞診もあわせて行われることがある。
子宮頸部の細胞診とは?
ブラシや綿棒、ヘラなどの器具で子宮頸部の細胞をこすりとって、顕微鏡で調べる。がんの前段階の状態まで確認できる。
ドクターからアドバイス
子宮頸がん検診は痛いという誤解が多いのですが、性経験のある人では痛みはほとんどありません。
また、不正出血などの症状がある場合は、検診を待たずに婦人科に受診してください。
※上記の検診の内容は厚生労働省が市町村に示した指針に基づくもので、検診機関によって異なる場合があります。
(『すこやかファミリー』2017年3月号(株式会社法研)より改編)
ご精読ありがとうございました!