VDT症候群

医療法人社団こころとからだの元氣プラザ
巡回健診部長 産業保健部長 谷口清英
 (元氣プラザだより:2018年7月号更新)

2018年は4年に一度開催されるFIFAワールドカップ ロシア大会の年でもあり、日本代表SAMURAI BLUEの活躍に日本列島が沸き返りました。なかでも、深夜の熱戦への応援では、視聴者の多くが日中の仕事に加えて深更に至るまで眼を酷使せざるを得ず、現代人の眼精疲労に一層の拍車をかけることとなっています。

本コラムでは一種の現代病とでも言うべきVDT症候群について述べたいと思います。

“VDT”とはVisual Display Terminalsの略語で、コンピュータ-のディスプレイ等の液晶表示機器を指し、このVDTを使用した作業・業務をVDT作業といいます。そして、 VDT症候群とは、VDT作業を長時間行うことに伴い生じる心身の下記症状を表します。

VDT症候群

  1. 眼の症状 - ドライアイ、充血、視力低下、目の疲れ(眼精疲労)など。
  2. 体の症状 - 首、腰、肩のこり、だるさ、痛み。慢性化すると背中の痛み、手指のしびれなど。→ 頚肩腕症候群、手根管症候群。
  3. 心の症状 - 食欲減退、イライラ、不眠、不安感、抑うつ症状など。

 

まず、巡回で行われる職域特殊健診のVDT健診では、眼科的検査の確認や指導として、

  1. 5m視力、近見視力を確認し、メガネ、コンタクトの人は適切に矯正されているかをチェックする。特に近見視力は大切で、パソコンモニターがよく見えていないと眼精疲労の原因となり、調節力低下(いわゆる老眼)は人によっては30代半ば頃から始まり近見視力が低下するので、メガネ矯正や眼科受診を勧奨する。
  2. 眼位検査について:カバー・アンカバーテストにおいて“斜位”があると眼精疲労の原因となるので、自覚症状が酷い場合には眼科受診を勧奨する。

等が実施されています。

 

一方、企業の産業保健分野でのVDT症候群に関する労働衛生3管理の注意事項として、

(ア) 適正な作業時間については、
  1. 連続作業時間が60分を超えないようにする
  2. .次の作業時間との間に10~15分の作業休止時間(休憩ではない)をとる。
    VDT連続作業時間内に1~2分程度の小休止を適度にとる等のモニター注視オフ の時間を設定する。

(イ)正しい作業姿勢については、

  1. イスに深く腰かけ、背もたれを十分にあてる。
  2. 足元のスペースを確保する。
    足の裏全体が床に接するようにする。
  3. 画面の上端が眼よりやや下(10度程度の角度で見下ろす感じ)にする(見上げるようにすると、「ドライアイ」になりやすくなる)。
  4. 肘の角度は、90°もしくはそれ以上にする。
  5. 画面と眼の距離は40cm以上離す。
  6. 視力矯正が必要な場合、VDT作業中は近くが良く見える眼鏡を着用する。
    遠近両用メガネはモニターを見るときに顎が挙がる姿勢になり頚に負担がかかり肩こりの原因になるので避ける。ブルーライトをカットするPC用眼鏡等を使用する。
  7. コンタクトレンズを使用する際は、ソフトよりハードが望ましい(コンタクトレンズは、遠方の度数で処方されるため、近くのものを長時間見つめる場合には、 調整力をより強く要求されて眼が疲れるが、眼鏡は容易に外すことで対応が可能である)。
    ソフトコンタクトは眼表面を覆うため眼の痛みを感じにくく、さらにVDT作業で瞬きの回数が減少すると、知覚神経から脳へ伝達される「涙を分泌する指令」が減ることで「ドライアイ」を招来するため、定期的な目薬の点眼が望ましい。

(ウ)適切な作業環境については、

  1. 画面に、照明器具や窓などが映りこまないようにし、光源は、作業者の視野に入らないようにする。視野に入る明るい窓には、ブラインドやカーテンをつける。
  2. 画面、書類・キーボード面の明るさと、周囲の明るさとの差を小さくする。
  3. 画面上は500ルクス以下(眩しすぎない)、書面・キーボード上は300ルクス以上の明るさにする。PC画面の照度は、工場出荷時設定より約2段階位暗くする。
  4. キーボードは画面から分離しているのが望ましい(ノート型よりデスクトップ型)。
    机の上には前腕が置けるスペースがあるのが望ましい。
  5. 作業休止時間・休憩時間には体操・ストレッチを行うようにする。
    眼精疲労の手当てとしては、眼窩の辺縁に沿ったマッサージも有用である。
  6. 点眼薬の点眼は頭部後屈による頚部の“こり”の軽減効果も期待できる。
  7. 冬場等、乾燥する際には加湿器等の使用が望ましい。また、エアコンの風が直接当たらないように配慮する必要がある。

等が重要となります。

人体は、情報量のおよそ87%を“視覚情報”から得られていると言われており、視覚を担う臓器である”眼”はこれからも大事に扱っていくことが大切です。

特に、パソコン業務以外の一般生活でのプライベート時間においても、SNS等による高頻度コミュニケーションの常態化によるスマートフォンやケータイの液晶画面を、長時間注視することや上述の大画面液晶テレビの視聴等があり、業務外のVDT症候群の一大要因とも考えられることから、電子機器使用時間削減等の生活習慣の改善が必要でしょう。

 

ご精読ありがとうございました!

 

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