健康診断に纏(まつ)わる水の話

医療法人社団こころとからだの元氣プラザ 巡回健診部長 
社会医学系専門医・指導医 労働衛生コンサルタント 谷口 清英
(元氣プラザだより:2017年12月号)

 日頃巡回での職域健診に携わる職掌柄、診察の現場で次のような質問に度々遭遇します。

「今日の健康診断の尿検査で、潜血反応が±(もしくは+)でした。何か具合の悪いところがあるのでしょうか?」

「昨晩から飲まず食わずであるとか、水分補給が不十分なのではありませんか」
「ええ、そうです。」
「通常の状態とは異なり、今朝は脱水状態となっているのではないかと思われます。それに伴って尿が濃縮された状況が想定されると考えますが」
「‥‥‥」

 職域での健診の場合、通常では消化器健診(バリウム造影検査)を併せて実施されるケースが多いと思われますが、このバリウム検査の検査前注意にも“注意”が必要です

 弊法人が実施する上部消化管X線検査では、消化器健康診断票に、“検査に際してのご注意(水分について)”として以下の記載があります。 特に下線部分は重要ですので、くれぐれもご注意願いたいと思います。

◎検査前日
水分(水・白湯)は、普通にお取りください。

◎検査当日
検査の2時間前までに、コップ1~2杯の水をお飲みになることをおすすめ します。
(胃の粘液や食べ物の残渣を洗い流すためです) それ以降は何も口にしないでください。
※牛乳・ジュース・お茶・コーヒー等は絶対に飲まないでください。

◎検査終了後
便秘をさけるため普段の3倍以上の水分をおとりください。
※アルコールは極度の便秘になる危険がありますので、白っぽい便が出るまで飲酒はお控えください。

 労働安全衛生法に規定された職域の労働者の健康診断が、平素の健康状態を判定し、就労に支障がないことを確認することを本旨とするならば、できるだけ普段通りの生活スタイルのままに(水分摂取も普段通りに)健診を受診されることが望ましいと考えます。

またこのことは地域の住民健康診断においても同様の注意点であると考えます。
さらに、御参考に供するものとして、血尿診断ガイドライン2013(血尿診断ガイドライン編集委員会編)より抜粋した、健診に関わる内容を下記に転載しておきます。

www.jslm.org/others/news/hugl20140523.pdf

Q. 健診での血尿検査はどのような採尿条件を推奨しますか?

採尿前は激しい運動を避ける。採尿には清潔な容器の使用を推奨する。中間尿,早朝第一尿,随時尿など採尿時間の明記を推奨するのに加えて,

  1. 朝第一尿採取,
  2. 前日夜にはアスコルビン酸(ビタミンC)を多く含む食品の摂取は控えること

を推奨する。

Q. 健診での尿潜血陽性率は男女差,人種差,年齢ならびに採尿条件(随時,早朝, 食前,食後)により差がありますか?
  • 尿潜血の陽性率は女性に高い。
  • 尿潜血の陽性率は加齢とともに上昇する。
  • 採尿条件では随時,早朝,食事の影響はないものの,女性の場合の月経血の混入にも
    注意を要する。
  • 血尿以外にも激しい運動後,外傷後など尿潜血反応が陽性となる場合がある。
  • 尿潜血の陽性率は数% –20%台まで大きく差があり,一部のスクリーニングで高陽性
    率の報告がみられるが,対象の年齢により大きな相違がある。
  • 人種別の尿潜血陽性率の差異の有無は不明である。


以上

ご精読ありがとうございました!

 

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